紹介状なしの大病院の外来、自己負担がより高く
2022.04.01
紹介状なしで大きな病院の外来にかかると、診察料のほかに“特別料金”がかかるということ、ご存知ですか?
これまでは初診で5,000円(歯科の場合は3,000円)以上、再診で2,500円(歯科は1,500円)以上の特別料金が診察料に上乗せされていました。その「紹介状なしで大病院にかかったときに支払う特別料金」が、2022年10月からさらに高くなります。
紹介状なしの特別料金、いくらになるの?
紹介状をもたずに大病院の外来を受診すると、これまでは診察代とは別に、以下の金額がかかっていました。
●初診 医科5,000円、歯科3,000円
●再診 医科2,500円、歯科1,500円
この特別料金には健康保険が適用されないので、全額、患者さんの自己負担になります。
この金額が、2022年10月1日から以下のようにさらに増額されます。
●初診 医科7,000円、歯科5,000円
●再診 医科3,000円、歯科1,900円
病院側の収益は増えない
前述したように、紹介状なしに大病院の外来を受診した際に病院側が徴収しなければいけない特別料金が増額されるのに伴い、今回、新たに「一定額を保険給付範囲から控除」することになりました。
どういうことかと言えば、たとえば紹介状をもたずに大病院に初診でかかったとすると、診察料に上乗せされる特別料金(10月からは7,000円以上に)は患者さんの自己負担になりますが、診察料のほうは保険が適用されます。3割負担の患者さんであれば、診察料の7割は医療保険から支給されるわけです。
でも、あえて紹介状なしで大病院の外来にかかっているのであれば、公的な保険でカバーする必要性は低いのではないか……との考えから、診察料の一部を保険給付の範囲から除外するということです。
具体的には、初診では医科・歯科ともに200点(2,000円)、再診では医科50点(500円)、歯科40点(400円)が保険給付範囲から外れることになりました。初診の2,000円、再診の医科500円、歯科400円というのは、ちょうど、全額自己負担となる特別料金の増額分と同じです。
つまりは、保険給付から外した分を、そのまま患者さんの自己負担に上乗せしたということ。患者さんの負担は増えますが、病院側の収益が増えるわけではありません。
紹介状ナシで高くなる「大病院」とは?
また、今回の見直しで、紹介状なしだと自己負担額が高くなる「大病院」の範囲も広がりました。
これまでの対象病院は、
●特定機能病院(大学病院、がんセンターなど)
●一般病床200床以上の地域医療支援病院
でしたが、さらに「紹介受診重点医療機関(一般病床200床以上に限る)」が加わりました。この紹介受診重点医療機関は、今回新たに取り入れられた枠組みで、紹介患者さんへの外来等を基本とする医療機関として地域で選定される病院・クリニックです。
これらの病院は、紹介状をもたない外来患者さんに対して、初診で7,000円以上、再診で3,000円以上の費用を徴収しなければいけません。
なぜ紹介状ナシだと高いの?
救急などの特別な場合を除いて、紹介状なしに大病院の外来を受診すると、かなり高くついてしまうわけですが、なぜ国はこうした制度を設けているのでしょうか。
それは、大病院は高度な医療が必要な患者さんや重症の患者さんの対応を行い、日常的な病気やケガの対応はクリニックが行う――という役割分担を行うためです。
身近な病気にもかかわらず、たくさんの患者さんが大きな病院の外来に押し寄せたら、本来、大病院が診るべき重症な患者さんへの対応が手薄になってしまいます。それでは地域医療はうまく機能しなくなります。
ですから、効率的に医療にかかるためにも、地域医療を守るためにも、そして自身のお財布のためにも、身近なクリニックや中小病院(一般病床が200床未満の病院)で、信頼のできるかかりつけ医を探しておくことが大切です。
◎厚生労働省「令和4年度診療報酬改定の概要 外来Ⅰ」
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000920428.pdf